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社会・文化

児童精神医療「後進国」ニッポン

少年「猟奇犯罪」は今後も防げない

2014年9月号

 七月に起きた長崎県佐世保市の女子高生による同級生惨殺事件は、改めてわが国の児童精神医療の不毛ぶりを浮き彫りにした。医療関係者も行政機関も、誰もが児童精神医療のシステムについて抜本的な制度改革が必要であることを認識しているにもかかわらず、長い年月の間、放置されたままだ。児童精神医療の機能不全が、猟奇的な少年犯罪が繰り返される背景となっていることは、もはや疑いようのない事実である。  佐世保の事件では、児童精神医療の世界で権威とされ、多数の著作も出している専門医が、事件の前に女子高生の診察を行っている。その際、女子高生が他人に対して凶悪な犯行に及ぶ可能性を認識していながら、入院等の適切な処置をしなかった。専門医は、なぜ事件を未然に防げなかったのか。 都内でも専門施設は一つだけ  まず何よりも認識しておくべきは、児童精神医療に携わる病院や診療施設、あるいは専門のスタッフが、患者の数に比べて、驚くほど少ないという現実である。  児童精神科が扱う疾患は多様である。第一に、精神遅滞(知的障害)や脳性麻痺など生まれながらの疾患に加えて、幼児期から児童期に顕在化・・・