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中東の「武器闇流通」最近事情

紛争泥沼化で盛況の「死の商人」

2014年9月号

 今次の「ガザ戦争」でハマスの武装勢力は「三千発以上」(同幹部)といわれるロケット弾を発射した。四方を鉄条網と海に囲まれた文字通り「巨大な監獄」状態のガザ地区には、驚くべき数の高性能ロケット弾が貯蔵されていた。一体どのように持ち込まれたのか。過去を振り返り、ロケット弾武装の段階を調べると、今、ガザ地区の抱える問題が浮き彫りになる。  オスロ合意を拒否し、武装抵抗路線を追求したハマスがガザ地区の実権奪取と相前後して取り組んだのは、自家製ロケット弾「カッサーム」の開発と改良であった。当初その射程は三キロメートル程で、これが十~二十キロに延びたとしても少し危ない打ち上げ花火のようなもので、イスラエルの脅威たり得なかった。ところが、ハマスは二〇〇六年にグラッド・ミサイルの技術を獲得し、射程はいきなり約四十キロに延びた。これにより、〇八年頃よりアシュドッド、アシュケロンといったイスラエル南部の主要都市と周辺集落が襲われ、事態はより深刻化した。  今回発射されたロケット弾の大部分は破壊力の限定的なこれらのロケット弾で、ガザ地区内の鉄工所等に偽装された工場内で製造されたものだ。 ・・・