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「クルド独立」で発火する新たな紛争

民族内対立で「自壊」の運命

2014年9月号

 イラク分裂が決定的になる中で、米欧各国は八月に相次いで、クルド自治政府に武器供与を開始し、クルド人は「独立」に大きく近づいた。だが、自治区内でもクルド人の間に深刻な内部対立がある上、トルコ、シリア、イラン各国のクルド人は異なる思惑を抱えている。「クルド独立」は早々に「クルド大分裂」という、新たな紛争を生むのは必至である。 再燃は時間の問題  最後は慎重居士のドイツまで、クルド支援を急いだ。  社会民主党のフランク・シュタインマイヤー外相、キリスト教民主同盟のウルズラ・フォンデアライエン国防相は八月二十日、そろって「時代は変わった」と宣言し、ドイツ政府の武器供与開始を発表した。ドイツが紛争地域、それも中央政府とは別の地方政府に武器を送るのは極めて異例のことだ。米軍が「イスラム国」に対する空爆を八月七日に始めてから、二週間も経っていなかった。ドイツが同様の動きを見せたのは、一九九〇年代前半のユーゴスラビア内戦時のこと。独立が国際的に承認される前に、クロアチアに武器供与したが、この時は極秘扱いだった。  空爆開始から十日余りの短期間に、米英に加えてフラ・・・