幕を引くプーチンの 「無謀な冒険」
「外交決着」に向かうウクライナ
2014年9月号
プーチン露大統領の大冒険が終わりの時を迎えた。ウクライナに軍事侵攻して泥沼に落ちるか、侵攻せずに国内での評判を落とすかの「悪魔の選択」を突きつけられていたプーチンは、メルケル独首相の助けを借りて、「外交決着」に動いた。残るのは国際的孤立と経済の低迷、犯罪者だらけの不毛な「新領土」である。
天然ガスと領土の交換
「その日」に向けた緊張は、クレムリンからの一つの通告で一瞬のうちにしぼんだ。
八月十四日、クリミア半島で行う演説は、プーチンによる「宣戦布告」になると臆測を呼んでいた。本誌先月号で報じたように、マレーシア航空機のウクライナ上空での撃墜事件後、プーチン政権はウクライナ東部の分離主義者たちに、軍事支援を急ぎ、大失策を軍事的勝利で覆い隠そうとした。八月中旬には、総数二百八十台の大型トラックによる巨大コンボイをウクライナ方面に向かわせ、「露軍侵攻近し」の観測が強まった。
ところが、クレムリンは演説当日に、演説を生中継しないと各メディアに伝えた。各局は急遽番組を変え、大統領演説の際には必ず連発される通信社の速報も、この日は音なし。後にテレビで流さ・・・