英国で再膨張する「不動産バブル」
破綻覚悟で突き進む中銀の「真意」
2014年9月号
「(彼は)世界最高のセントラルバンカーだ」。英ジョージ・オズボーン財務相は二〇一二年十一月、英中央銀行イングランド銀行(BOE)の次期総裁としてカナダ人のマーク・カーニー氏を指名して世界を驚かせた。一三年七月に就任したカーニー総裁は一六九四年の同行創設以来、初の外国人総裁として、また米ゴールドマン・サックスでの長い現場経験を持つことから「中銀の独立性を担保する」と受け止められ、市場は歓迎した。
その後、直近の今年四~六月期国内総生産(GDP)改定値は前年同期比で三・二%増加するなど経済成長回復は目覚ましい。だが、足元で不動産バブルが膨張する一方で、実質賃金低下が続く「賃金なき成長」を前に、金融緩和を続け発言が二転三転する総裁は、市場を混乱に陥れている。彼は二重人格者なのか……。GDP成長とは裏腹に、高まる国民の怒りの矛先はカーニー総裁から今、その背後に浮かび上がる「もう一人」の人物に移りつつある。
明らかになる“真の総裁〟
「財政再建の使命を果たすうえで、金融における積極的な行動は政府の経済戦略で重要な役割を担っている」。オズボーン財務相は一三年三月、・・・