習近平の危うい「恐怖政治」
軍と太子党に広がる「失望と恨み」
2014年9月号
中国共産党の党内抗争は十月開催の通称「四中全会」、正式には党第十八期中央委員会第四回全体会議に舞台が移った。四中全会の表向きのテーマは「法による治国」とされているが、その実態は習近平国家主席の権力掌握に抵抗した政敵、周永康・前党中央政治局常務委員の党籍を剥奪し、終身軟禁状態に置くという前近代的な政治的抹殺処分だ。
天安門事件では失脚した改革派の元党総書記、趙紫陽が裁判を経ずに党の決定によって死ぬまで自宅軟禁された。周永康について「法治」と言われているのは、形式的に裁判にかけて、処分を可視化するという意味にすぎない。政敵に対する恐怖政治という習近平政権の性格が明らかになってきた。
「怖がっているのはどっちだ」
周永康処分を四中全会へ付託する手続きを、近代的な法の支配や民主化ととらえるのは誤解だ。これは単に、習近平が周永康を打倒するために必要な党内手続きをとったにすぎない。中国共産党では最高位の総書記のランクは党中央政治局常務委員であり、同じランクの前任常務委員の党籍剥奪処分ができない。このために政治局常務委員の選出権を持つ中央委員会の総会議決で党除名・・・