Book Reviewing Globe 363
地政学の復活
2014年8月号
今月の一冊
Geopolitics, Geography and Strategy
Colin S.Gray and Geoffrey Sloan, ed.
Frank Cass
1999
ロシアによるクリミア半島の併合と中国の領土問題をめぐる南シナ海と東シナ海における近隣諸国に対する威嚇攻勢を、世界のジャーナリズムは、「地政学の復活」と形容した。
二十世紀前半、英米本位の既成秩序に対するドイツと日本の挑戦を、ナチスの地政学者たちは「地政学的挑戦」と正当化した。そのため戦後、欧米はこの学問も言葉もナチスの政治的宣伝として追放したいきさつがある。その言葉が、二十一世紀になって突如、息を吹き返してきたように見える。
しかし、地政学という言葉はヌエ的で定義しにくい。
世界の地政学者による共同研究であるこの本で、編者は、地政学を「政治的優越は、人的かつ物的資源におけるパワーだけでなく、パワーが行使される地理的文脈においての課題でもある」と位置づけ、「パワーはローカルであり、地理は戦略の母である」と規定する。
問題は、地政学が・・・