三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

連載

日本の科学アラカルト 48

エネルギー効率利用に壓がる 「次世代化学電池」の開発

2014年8月号

「電池」とは様々な反応により直接電気エネルギーを取り出せるものを指す。物理反応と化学反応に大別され、太陽光発電で使用されている太陽電池は光という物理的なエネルギーを電気に変換し取り出すため、「物理電池」に分類される。ほかに熱電池や原子力電池が物理電池に分類されるが、使用場所が限定されるか出力が小さい。 「化学電池」は乾電池から、携帯電話の充電池、自動車のバッテリーなど身近であり、エネルギーの運搬などの利便性という観点で物理電池に勝る。化学電池には充電不可能な一次電池と、充電できる二次電池のほか、水素を補充することで連続的に発電する燃料電池がある。これらはすでに広範囲で使用されている一方で課題も多い。走行距離の短さと高価格が電気自動車普及のネックになっているがこれは電池性能の問題に帰結する。  東京大学大学院工学系研究科の水野哲孝教授は、次世代二次電池の研究に取り組んでいる。水野教授らのグループは七月に、日本触媒と共同でリチウムイオン電池(LiB)の七倍のエネルギー密度を持つ二次電池の動作実証に成功したことを発表した。  携帯電話やパソコンなどに現在使用されているLiB・・・