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北朝鮮「国家安全保衛部」の研究

拉致問題の全貌を握る「秘密組織」

2014年8月号

「横田滋さんと早紀江さんが自らの手でめぐみさんを抱きしめる日が来るまで、私の使命は終わらない」。七月十九日、下関でそう演説した安倍晋三首相にとって、拉致問題の解決は、政権の浮沈がかかる最重要課題だ。そんな安倍政権に応じる形で、七月四日、北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、日本人拉致被害者等を再調査する特別調査委員会の調査開始を伝えた。委員長に指名されたのは徐大河。朝鮮国防委員会安全担当参事を兼ねる国家安全保衛部(保衛部)の副部長だった。日本政府は、昨年末から始まった一連の日朝協議のなかで、繰り返し保衛部の手による再調査を求めてきた。日本が期待をかける保衛部とはいかなる組織なのか。 「政治不満分子」を根絶やしにする  保衛部は一九七三年、内閣所属の社会安全部(一般警察)の一部が分離し、国家政治保衛部として誕生した。この年は金正日総書記が、朝鮮労働党の宣伝扇動担当書記に就任した年で、内部的にはほぼ次期指導者としての地位を確立しつつある時期にあたった。お手本は、旧ソ連の国家保安委員会(KGB)とされる。国内のスパイ摘発も任務の一つだが、金正日はもっぱら、保衛部を国内・・・