ドイツ「二重スパイ事件」の真相
米国の手先だった独「連邦情報局」
2014年8月号
アメリカの国家安全保障局(NSA)の通信傍受に続き、ドイツ国内での米国のスパイ活動が発覚した。だが、両国政府間の「摩擦」の水面下では、情報機関同士の極秘協力が深まっている。独情報機関の対米協力は、英国など英語圏同盟四カ国との「ファイブ・アイズ」に匹敵するほどで、米国の対テロ戦争の欧州大陸における、最大拠点になっている。
「ドイツは被害者」は嘘
ドイツの二重スパイは、実に不用意な男だった。
三十一歳の連邦情報局(BND)職員「マルクス」は今春、ミュンヘンのロシア領事館に、「お役に立ちたい」と電子メールを送った。これを傍受した連邦憲法擁護庁(BfV)が驚いて内偵すると、男は二年前に同様のメールをベルリンの米大使館に送り、二万五千ユーロの報酬で情報を流し続けていたことも分かった。盗んだ情報を入れたUSBメモリーは、自宅で見つかった。
「言語障害があり、高校を中退した。スパイのスリルを求めた犯行という可能性もある」と、情報問題に詳しいドイツ人記者は言う。
昨年はメルケル首相の携帯電話盗聴が発覚。オバマ大統領が深く陳謝したのに、BND以外にも国防省・・・