習近平「腐敗摘発」の最終章
最大の政敵「訴追」を懸けた闘争
2014年8月号
渤海湾の最奥部に面した中国河北省秦皇島市。七月末、秦皇島の駅に、始発の駅名も終着の駅名も表示していない不思議な列車がホームを発着するのが目撃されるようになった。共産党の指導者を運ぶ特別列車だ。毎年夏、党や軍の首脳と長老たちが近くの海浜リゾート「北戴河」に集まり党内の意見対立を調整する。通称「北戴河会議」。昨年十二月、天津から秦皇島まで高速鉄道が延び、高速道路を行く黒塗りのベンツの車列に取って代わった。
今年の北戴河会議には異様な緊張感がある。党政治局常務委員たちが滞在する七月下旬から八月十五日まで、南京、上海などの華東地区と一部の華南地区で、、習近平国家主席の近衛軍と言われる空軍中心の大演習が続く。演習の規模は、一九八〇年代にソ連の侵攻に対抗して行われた演習を上回る。
夏休みだというのに、なぜ軍が長期間の実戦態勢に入るのか。軍事専門家は東シナ海からの日米同盟の攻撃を想定した訓練だと分析しているが、政局的な分析も必要だ。北戴河会議で習近平が汚職腐敗の責任追及をする時に、軍を掌握していることを見せつけて、長老からの反発を封じ込める、内向きのデモンストレーションでもあるのだ・・・