値崩れ始めた「液化天然ガス市場」
高値拙みの「愚行」は日本だけ
2014年8月号
液化天然ガス(LNG)の供給が世界的にだぶつき気味で、値崩れ現象が始まっている。LNGプロジェクトの主役は石油メジャー(国際石油資本)のロイヤル・ダッチ・シェル。強い価格交渉力を背景にこれまで巨額の利益を上げてきた。「儲け過ぎ」とも批判されたが、同社の生命線であるLNG事業にも凋落の兆しが鮮明になっている。
もともとLNGは高いものではなかった。一九九〇年代の日本のLNG購入価格(運賃・保険料込み)は、百万Btu(ブリティッシュ熱量単位)当たり三ドル台。それが、東日本大震災以降に、日本がLNGを年間二千万トンも追加購入する中、原油価格の上昇も相まって、LNGを震災前の百万Btu当たり十ドルから、大幅に値上げした十八ドルで販売することにより、シェルはLNGビジネスで巨額の利益を貪ってきた。
だが、最近はこの流れに変化が出ている。欧州諸国では石炭価格と比較して天然ガス価格が割高であるために、スペイン、イタリアをはじめとしてLNGの輸入量が減少している。二〇一二年の世界のLNG貿易量は、三十一年ぶりに前年割れを起こすという異常事態となった。「シェルが、調子に乗ってLNG価格・・・