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中国軍機「異常行動」の深層

変質始めた米中「新型大国関係」

2014年7月号

 尖閣諸島を巡る中国の一連の行動は、もはや挑発というレベルではなくなっている。  五月から六月にかけ、東シナ海上空で中国軍のスホイ27戦闘機が自衛隊機に異常接近する事件が続発した。三十~四十メートルまで近づいて自衛隊機を追い払おうとする威嚇行為だが、一瞬の判断ミスで衝突につながる距離だ。防空識別圏に入った他国機へ行う平時の警告にしてはあまりにも非常識なので、パイロットの技量不足による暴走と見る向きも多い。  しかし、中国の常万全国防相はこの四月に訪中したヘーゲル米国防長官に「こちらは戦争準備が整った」と通告している。中国人民解放軍は、平時から踏み出した文字通り臨戦状態にあるのだ。 米国に対する「矛」と「盾」  一連の異常接近事案は二〇〇一年に南シナ海で起きた「海南島事件」を想起させる。海南島周辺空域を飛行中だった米軍EP3電子偵察機に対して中国の殲8戦闘機が接近・接触し、米軍機は海南島に不時着、中国機は空中分解しパイロットは行方不明になった。  衝突の責任は中国側にあったが、江沢民政権はブッシュ政権(共に当時)に執拗な抗議を続け、最終的にパウ・・・