「空中分解」始めた欧州連合
中軸国が「反EU」に急傾斜
2014年7月号
欧州連合(EU)が空中分解を始めた。
五月に行われた欧州議会選挙で、EU統合に反対する「欧州懐疑派(反EU派)」が大躍進したにもかかわらず、EU指導層は有権者の抗議票を黙殺し、今年末に発足するEU新執行部で、旧態依然の指導層を選ぶことになった。英国の離反が決定的になった上に、ドイツとともにEU統合の「枢軸」を構成したフランスが、官民ともに「反EU」に急傾斜している。
欧州ではデフレーションの危険性が進行しているのに、主要国の首脳たちはポピュリズム(大衆迎合主義)に振り回され、漂流するばかりだ。ユーロ危機の表面化から四年で、欧州経済はますます再建から遠ざかっている。
独仏英が嫌った「ユンケル委員長」
ジャン・クロード・ユンケル。欧州有権者には正体不明の人物が、欧州政治を騒がせた。EU総人口の〇・一%、五十万人の小国ルクセンブルクの首相を十八年務めた男だ。
EU嫌いの英国では、狡猾かつ高慢そうな風貌が「敵役」にぴったりで、デービッド・キャメロン首相は「ユンケルを欧州委員会委員長に選ぶなら、英国はEU脱退も視野に入れる」と脅し、六・・・