米国「脱石炭」戦略で凍える新興国
アジア経済成長阻む「オバマの変節」
2014年7月号
米国のオバマ大統領が「脱石炭」に舵を切った。シェール革命による天然ガスの調達コスト低下を背景に石炭産業の切り捨てを進める。そのあおりで、外貨獲得を石炭輸出に大きく依存する豪州やブラジルなど新興国では資源バブルが崩壊し、景気回復が遠のいた。
オバマ政権は世界の環境保護を旗印に、資金面で石炭火力発電所建設を抑制する政策も展開しており、安さに頼って主要な電力源を石炭火力としているアジア諸国の経済成長を阻害する恐れもある。石炭に代わって発電燃料を米シェールガスに転換するよう強いている、とのうがった見方もできる。
環境保護を進めた大統領として歴史に名を残すエネルギー戦略転換の裏には、世界経済の実情を無視して一国至上主義を貫く「変節ぶり」も垣間見える。
景気回復が遠のく豪州とブラジル
米石炭業界は世界最大の埋蔵量をバックにワシントンへのロビー活動によって強大な政治力を発揮し、一時は国内発電量の五割を石炭火力が占めていた。一九九七年に国際的に合意された京都議定書を米国が二〇〇一年三月に離脱したのは、議定書に盛り込まれた温室効果ガス排出削減目標を守れば国内・・・