経産省が弄ぶ「エネルギー大再編」
東電改革に名を借りた「省益拡大」
2014年7月号
四月八日夕刻、東京・西新橋にあるステーキハウス「跏皮」―。一人五万円は下らない三田牛のフルコースを出す高級店で、東京電力の數土文夫会長と嶋田隆取締役は来客を待っていた。ほどなくして外国人二人、日本人一人が現れ、挨拶もそこそこに和やかな歓談が始まった。上機嫌の數土氏は乾杯の合間に製鉄技術の薀蓄を披露し、笑い声は個室の外にまで響いていたという。
「その晩の相手は独シーメンスの幹部。數土さんは四月の会長就任の前から、米GE(ゼネラル・エレクトリック)はじめ海外の重電メーカー各社に接触していた」
ある事情通はこう語る。それを裏付けるように東電は六月十一日、老朽火力発電所リプレースの国際入札を発表した。年末までに六百万キロワット分の設計・調達・建設(EPC)の委託先を決めるが、国内電源のEPC一括発注は過去に例がない。數土氏は、従来の東電独自仕様による特注品の発注を改めさせ、GEやシーメンスに丸投げすることで、汎用品による安価なリプレースを目指したわけだ。
JFEスチールの初代社長時代から“コストカッター”と呼ばれた數土氏の面目躍如と言えるが、しかし、外部のエネルギー各社・・・