三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

連載

不運の名選手たち 54

駒野友一(サッカー選手)日本中が溜め息をもらしたPK
中村 計

2014年6月号

 必要最低限のことしか言わない。そんな決意が伝わってきた。

 インタビューに入る前、簡単に取材意図を説明しつつ、探りを入れたのだが、練習用ジャージを身につけ、正面に座っていたジュビロ磐田の駒野友一は、返事はおろか、頷くことさえしなかった。

 話したくないのか、それとも性格なのかは、その段階では判断しかねた。

 駒野の名前が全国区になったのはちょうど四年前、二〇一〇年六月に南アフリカで開催されたサッカーW杯だった。日本代表は下馬評を覆し、決勝トーナメントに進出。一回戦で南米の強豪、パラグアイとぶつかった。試合は、延長戦を終えても0-0のまま決着がつかず、PK戦にもつれた。

 五人対五人で行われるPK戦。監督の岡田武史は三人目のキッカーとして、前日のPK練習で三本中三本決めていた駒野を指名した。

 展開にもよるが、三番目は比較的楽に蹴られるポジションでもある。PK戦で重圧がかかるのは、やはり最初と最後だ。そのため岡田は一人目にベテランの遠藤保仁、五人目に精神的支柱の田中マルクス闘莉・・・