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連載

本に遇う 連載 174

日本国憲法の文体
河谷 史夫

2014年6月号

「集団的自衛権」行使に躍起な首相会見をテレビ中継で見た。

 あちこちでチャンネルが切り換えられていることだろうと想像した。テレビの若い友人が、「集団的自衛権」と出ると視聴率が急落します、と言っていたのを思い出したのである。要するに視聴者大多数は無関心であるらしい。

 大衆の関心事のみにかまけて人気取りに励むのではなく、不人気な事柄でもあえて政治の主題にするとは、安倍晋三という政治家は大宰相の器かも知れない。そう言ったらテレビマンが噴き出した。

 大宰相にしては、やり方が姑息である。米国に求められるままに自衛隊を出したいのだが、憲法が壁になっている。戦後新憲法は米国からの押し付けであったことは間違いない。自主憲法を定めるべしという意見は当然である。世界情勢は変容する。時代に合わなくなったからと、改憲論が出てくるのも不思議ではない。

 現行憲法の下では自衛隊の海外派兵はできないとは、歴代自民党政権も踏襲してきた憲法解釈であった。派兵するには改憲の手順が要る。小学生にも分かる理屈である。なのに解釈を変えて・・・