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連載

西風 397

橋下文化切り捨て政策の「効能」

2014年6月号

 橋下徹が府知事時代に行った聖域なき歳出見直しで、削減を迫られた文化予算。標的にされた関西クラシック音楽界には、ショック療法の「効能」が表れ始めた。

 最も直接的な影響を蒙ったのは、大阪府・市の直轄だった二つの楽団だった。橋下府知事時代には財団法人大阪府文化振興財団が運営する大阪センチュリー交響楽団が、市長に転じてからは市所管の吹奏楽団たる大阪市音楽団が民営化。それらの文化予算削減が府市財政健全化にどれ程の効果があったか説明はないものの、全国に類例のない自治体直営のオーケストラとブラスバンドが、一人の政治家の意向であっさり切り捨てられたのは事実である。

 存亡の危機を前に旧態依然たる体質を顕わにしてしまった文楽は、橋下との対決姿勢を貫けなかった。また市公務員だったブラスバンド団員は、音楽を取るか公務員を取るかの踏み絵を突きつけられ、若く力ある奏者は別の団に流出、一部団員は楽器を捨て一般職に転向し、長年かけて築かれた日本トップクラスのアンサンブルは瓦解した。契約済みの仕事をこなすために新人団員を慌てて補充する有り様で、社団法人としてゼロからの出・・・

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