インターネットは 「国家支配」の時代へ
サイバー空間で進む「国境策定」
2014年6月号
「(世界の相互理解と平和は)オープンなインターネットによってもたらされる」
ワールドワイドウェブ(WWW)の創設者ティム・バーナーズ=リーは四月、ブラジルで行われたインターネット統治の国際会議「ネットムンディアル」の場でこう叫んだ。だが、現実はまったく逆に進んでいる。
五月十九日の記者会見で「“もう、たくさんだ”と言わなければいけない」と述べたエリック・ホルダー米司法長官は、「(米政府は)不法に米企業を妨害したり、自由市場における公正な競争の完全性を損なういかなる国の行動も容認しない」と警告。米司法省は中国人民解放軍のサイバー部隊「61398部隊」の五人を刑事訴追した。
この前日の十八日、中国側当局も意味深な発言をしている。
「インターネットの自由の名の下に、攻撃や中傷、風説の流布を繰り返し行い、わが国の安定性と安全保障を損なおうとしている」
国家インターネット情報弁公室の王秀軍副主任によるこれらのコメントは、翌日の米司法省の発表をまるで知っていたかのようである。いずれにせよ、米中間に代表される静かで苛烈な「サイバー戦争」が一線を超え、現実世界とリ・・・