タイ危機の本番は「プミポン後」
「経済優等生」にはもう戻れない
2014年6月号
「微笑みのクーデター」がまたしても起きた。タイ国軍の行動を諦観と共に肯定する国民が多いことは報道されている通り。バンコク在住歴二十年を超える貿易会社経営者も、「私が経験したのは八年ぶり三回目。甲子園のようなものだ」と楽観視する。
「タイでは政治と経済は無関係」。常套句のように繰り返される言葉だが、バンコクの外資系金融機関のアナリストはこう警鐘を鳴らす。
「前回の二〇〇六年と比較して、タイ経済の様相は激変している。今回は安穏としていられない」
混乱を自らの手で解決できないタイ政治の「甘えの構造」により、この国の成長神話にも陰りがさしつつある。
冷え込む「投資マインド」
クーデターの当日、バンコクの歓楽街タニヤでも暗くなるにつれて客足は落ち、午後十時以降の夜間外出禁止までに帰宅しようと次々と店の灯りが落とされた。テレビは通常番組を中止して、「国家平和秩序維持評議会」と書かれた画面と音楽を流し続けた。
ご存じの通り、この国でのクーデターは第二次大戦後だけでも十数回に上る。一九九一年のクーデターで発足した軍政は、翌年に民主化を求める国民の・・・