中国金融制度「崩壊」の序章
繋がり共産党支配を脅かす「ネット預金」
2014年6月号
「余額宝(ユエバオ)」―。直訳すれば「余り物の宝」という変わった単語だが、中国金融界に昨年、彗星のように出現し、たちまち八兆円超の資金を個人から集め、中国工商銀行など名だたる国有商業銀行を震撼させている金融サービスの名称だ。運営するのは中国のネット通販最大手で、ニューヨーク上場計画に世界の投資家が注目する阿里巴巴(アリババ)集団。余額宝は国有企業支配が続いてきた中国経済に金融の側面から風穴を開ける可能性を持ち始めた。それは中国共産党一党支配体制にもいずれ脅威となるかもしれない。
まずは余額宝とは何か説明する必要があるだろう。「オンライン・マネー・ファンド」と呼ばれるネットを使った投資信託で、先進国で一般化している「マネー・マーケット・ファンド(MMF)」の一類型といえる。MMFは公社債など安全性の高い金融商品に投資、短期の顧客に比較的高い利回りを提供してきた。余額宝も五~六%という中国では銀行預金とは比較にならない高い金利を提供、短期運用したい顧客を集めてきた。MMFとの大きな違いはスマホやパソコンでどこからでも、いつでも注文、売却できる手軽さ、柔軟性にある。
「異常な金融事情」が人気の背景・・・