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経済

「独り負け」キリンの止まらぬ凋落

国内外の事業不調で行き詰まる「名門」

2014年6月号

 JR中央線中野駅北口界隈―。「銘柄は?」とスーツを着た男が、店主に尋ねる。「うちはずっとモルツですが……」と答える店主に、「もっとおいしいビールないの?」と返した男らが差し出した名刺には「キリン」の文字。事態を察した店主は、「あ~失礼しました。生はチェーンの決まりでダメなんですが、缶でもよければ一番搾りを入れておきますので」と機転を利かせる。「わかった。じゃ、八十人予約で」―。  こうした居酒屋での光景はかつて都内各所にあったが、今は違う。以前は「住所がどこかわからない会社」と言われたキリンは昨年、本社を中野に集約移転した。キリンホールディングス(HD)が持ち株会社となり、ビール、ビバレッジ、メルシャンの三事業会社を統括する「キリン」を新たに設立するなどの組織再編の一環だ。  だが、こうした形ばかりの「構造改革」を行っているキリンに、ついに「その時」が訪れた。今年一月にアサヒグループHDが時価総額でキリンを逆転した「歴史的瞬間」だ。現在、キリンHDの株価は一千四百十八円(五月二十三日終値)。今世紀に入ってからの最安値は世界的に株式市場が低迷した二〇〇二年の六百九十二円。こ・・・