日本の科学アラカルト 45
細胞老化のシステムを探り 人体の機能低下を防ぐ試み
2014年5月号
人間だけでなく生物には、老化の先にある死から逃れたいという本能が存在する。人類の歴史をみれば、不老不死の研究が古今東西で行われてきた。
不老不死はオカルトの世界だが、老化のシステムを解明することは科学である。人間で考えた場合、歳を重ねるにつれてさまざまな病に侵される可能性が高まり、病だけでなく機能的な障害も生じる。こうした多くの生活上の不都合を排除し、単純に人生の質を向上させると同時に、医療費を減少させるという現実的な「効能」を持つ。
ひと言で老化といっても、脳や筋力、肌などさまざまな部位に現れる。しかし突き詰めると、それらを構成する細胞の老化が問題を引き起こす。細胞の老化システムや、その予防法を研究することで、さまざまな疾病を予防し治療することも可能になる。
人間の体内では日々、細胞が分裂している。常に新しい細胞が生まれているが、その分裂には限界がある。寿命に関係しているのが、細胞内のDNA(デオキシリボ核酸)が持つアミノ酸配列のうち、末端部分にある「テロメア」といわれる部分だ。テロメアは同じアミノ酸配列が繰り返し登場している。たとえば人の場合、TTAGGG・・・