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社会・文化

尖閣「準有事」シナリオの深刻

中国の「術策」に打つ手なし

2014年5月号

 集団的自衛権の行使容認へ血眼の安倍晋三首相。だがマスコミ各社の大々的な報道とは裏腹に、落としどころは個別的自衛権の外周縁をなぞる程度で、他国のために戦う本来の定義からは程遠い。それよりも現実性が高そうな尖閣諸島の防衛の方が喫緊の課題だ。安倍内閣は自衛隊による「領域警備」を検討するが、これでは「日本が先制攻撃した」と国際社会へのアピールを狙う中国の思う壺になってしまう。そもそも中国の領海侵犯を常態化させたのは日本による尖閣の国有化だ。尖閣防衛の決め手を欠いたまま、国有化に踏み切った代償は余りにも大きい。 制圧は困難を極める  防衛省は、二〇一〇年末に新たな「防衛計画の大綱」を策定した際、中国による尖閣の占領シナリオを取りまとめた。統合幕僚監部も複数のケースを想定する。一連の研究の最大公約数は「中国人民解放軍は自衛隊が出動するまで出てこない公算が大きい」ということだ。日本が仕掛けてきたと訴えて国際世論を誘導すると推測する。代表的なシナリオは次のようなものだ。 「中国当局と連携した偽装漁民が海保の警戒監視の隙を狙って尖閣の魚釣島に上陸し、中国は『漁船の難破』・・・