欺瞞だらけの 「貿易自由化」論議
TPP交渉の知られざる「内幕」
2014年5月号
安倍晋三首相は四月二十四日、来日したオバマ米大統領と会談し、懸案の環太平洋経済連携協定(TPP)について膝詰めで話し合ったが、「前進する道筋を特定した」という表現にとどまり、具体的な成果を出せなかった。
いまやTPPは、日米両政府にとって経済成長や雇用の増加を期待できる「チャンス」というよりは、協議の不調により政権にダメージを与えかねない「お荷物」となり始めている。負の側面をどのように抑制するかという「ダメージ・コントロール」の領域に入り始めたと言ってもいいだろう。
こうなってしまった元凶は、昨年二月二十二日にワシントンで開かれた日米首脳会談の「合意」が明確ではなかったことだ。当時、安倍首相は「聖域なき関税撤廃が前提でないことが明確になった」というレトリックを使って、「聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対」という自民党の公約を大転換した。これと前後する日米協議で、日本側は牛海綿状脳症(BSE)対策として導入した米国産牛肉に対する輸入制限を実質的に全面撤廃、さらにアフラックの保険商品を郵便局のネットワークで販売することを約束するなど過大な「TPP入場料」を払わ・・・