シンガポールに 「空洞化」の凶兆
港湾・空港「ハブ戦略」に暗雲
2014年5月号
シンガポールは人口五百三十万人の小さな島国だが、一人当たり国内総生産(GDP)は日本を大きく上回る五万四千ドルに達し、アジアで最も高所得の国家だ。資源は皆無で、面積も東京都の三分の一ほどの国家がここまでの成功を収めたのは「建国の父」であるリー・クアンユー初代首相が優れた国家戦略を展開したからにほかならない。そのコンセプトはシンガポールを物流、交通、金融、人材のハブにすることだった。だが、その成功は今、タイ、ベトナム、ミャンマーなど東南アジア諸国に侵食され始めた。シンガポールはバイパスされ、ハブ機能を失う危機に直面している。
インドシナ半島の「回廊」が脅威
「ミャンマーの開発が遅々として進まない要因のひとつはシンガポールでしょうね」。タイの建設関係者が重い口を開いた。日本、中国、インド、韓国など様々な国が入り乱れて開発プロジェクトを進めるミャンマーで、タイは最も注目されるダウェー開発を官民一体で進めている。ダウェーはインド洋に面したミャンマーの港町で、ここに大規模な港湾と工業団地を建設し、タイから高速道路を延ばすというプロジェクトだ。これに日本政府も加わり、ミ・・・