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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》児童養護施設

ドラマの比ではない「犯罪行為」の巣窟

2014年4月号

「地獄から抜けたと思ったら、ついた場所は別の地獄だった」

 埼玉県内の児童養護施設で八歳から十八歳までを過ごした二十代前半の男性は、絞り出すように語った。

 現在は、工事現場の警備員をして糊口を凌ぐこの男性は、幼い頃に実の親からの虐待を受け、児童相談所に保護された。その後高校卒業まで私立の施設で育ったが、職員や他の入所児童からの壮絶ないじめを受けたという。

 児童養護施設を舞台とした日本テレビのドラマに対する批判が出てCM放映が見合わされたことは記憶に新しい。抗議をしたのは、いわゆる「赤ちゃんポスト」を設置する熊本市の慈恵病院と全国児童養護施設協議会。

 しかし、北関東の児童養護施設で働いていた元職員は「協議会はどの面を下げて抗議できるのか」と憤る。恵まれない境遇にいる子どもを社会で育てる―。極めてシンプルな役割を担う児童養護施設の現場は、ドラマ以上の壮絶な状況にある。

拡大再生産される「虐待」

 児童養護施設とは児童福祉法に定められた福祉施設で、全国に五百八十九カ所・・・