三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

連載

続・不養生のすすめ 39

メタボ健診の犯罪
柴田 博

2014年3月号


 二〇〇〇年代に入り、いわゆる循環器疾患の予防のための健診の枠組みが大きく変わった。一九八三年からの健診の根拠となっていた老人保健法は、二〇〇六年、「高齢者の医療の確保に関する法律」に改正された。この健康診査の一部は、特定健康診査(これがいわゆるメタボリック・シンドローム健診、以下メタボ健診、である)として、医療保険者(健保組合)に義務づけられることになった。メタボ健診でひっかかった対象の特定保健指導もあわせて医療保険者に義務づけられた。国は、老人保健法時代に負担していた費用を払わなくてよくなり、すべて医療保険者に肩代わりさせたわけである。老人保健法は改正されたと先に述べたが、実質的には廃止されたのである。メタボ健診以外の事業は健康増進法に引きつがれたのであるから。

 老人保健法では、老人という名に反し、中身は、成人病(生活習慣病)予防の健診内容となっていた。四十歳以上の予防を一つの法律により一貫して実施しようという狙いが裏目に出ていたのである。四十歳も八十歳も同じような内容の健診を受けることになってしまった。四十歳と八十歳では同じ疾患であっても危険因・・・