過熱するスリランカ「争奪戦」
米中印が狙うインド洋の「急所」
2014年3月号
「地政学」という単語はこの十年、政治家から役人、ビジネスマンにまで乱用され、すっかり安っぽくなってしまったが、本来は軍事や国家戦略の用語として研ぎ澄まされた言葉だった。
もちろん今なお世界で「地政学上で重要」と言える国がいくつかある。マラッカ海峡の入り口を押さえるシンガポールや、ロシア、カザフスタン、アゼルバイジャンなど旧ソ連圏諸国がエネルギー資源を輸出しようとすれば必ず通るトルコなどだ。そして今、「地政学的に重要」として改めて関心を集める国がある。スリランカだ。
旧国名のセイロンの方が通りがいい世代もあるだろう。インド東南部に浮かぶ島国であり、物産で言えば紅茶と宝石で知られる。もともとはビーチリゾートとして欧州人に人気があり、リタイアした欧州人にとって天国のような国と言われた。だが、一九八三年に勃発した少数派タミル人と多数派のシンハラ人の衝突が全土に広がり、激しい内戦となったことで世界の関心から外れた。
支援で日本を抜いた中国
対立の根は英国の植民地から独立した後にシンハラ人主導の政府が始めたシンハラ人優遇の政策にある。反発・・・