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アサド家はなぜ「安泰」なのか

内戦長期化でも倒れぬ「独裁者一族」

2014年3月号

 「移行政府構想だろうが何だろうが話し合う用意はできている。しかしその前に、この会議を呼びかけた国々の求めである『暴力とテロの停止』について合意することが先ではないだろうか」

 二月、何ら具体的な進展なく終わったシリアの和平を目指す国際会議「ジュネーブ2」の記者団を前に、シリアのミグダード外務次官が余裕綽々の笑みをたたえて述べた言葉である。反政府勢力側は、アサド大統領の退陣を前提とした移行暫定政府構想を提案したが、「政府側が交渉に応じない。このままでは協議は物別れに終わる」と、国際社会がアサド政権へ強い圧力をかけるよう求めていた。外務次官のこの発言は、この主張に対する痛烈な反論であった。

 確かに、この会議は死者が十四万人を超えたとされる激しいシリアの内戦を停止させ、これ以上の市民の犠牲を出さないことを目的に招集された。しかし、アサド政権はこのおびただしい犠牲の大多数は彼ら政府軍の容赦ない砲爆撃によってもたらされていることを棚に上げ、その上で戦闘がやまないのは、テロリスト(つまり反政府勢力)が武器を置かないからだ、と主張しているのである。一方・・・