三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

「最強企業」任天堂の落日

「おっとり経営」に浮かぶ瀬はなし

2014年3月号

「いかに大きな経営環境の変化があったとはいえ、四半期決算で三回続けて業績予想の下方修正をせざるを得なくなったことに、責任を痛感しております」。任天堂の岩田聡社長は二〇一二年一月二十七日の経営方針説明会でこう述べていた。だが、その一年後も、二年後の今期も、同じことを語った。言葉が軽い。  ゲーム業界でハード、ソフトともに世界最大手の同社は、経常利益率三〇%前後という高い「収益性」、一兆四千億円の利益剰余金を持ち、有利子負債ゼロという高い「安全性」、業界最大手でありながら〇五年度から〇八年度にかけて四倍近い増収を記録した「成長性」を、かつては誇ってきた。その根底にある「競争を避けた独自のビジネスモデルとブランド力」は、優良企業中の優良企業とされ、経営学の教科書にまで登場してきた。だが、その収益性と成長性に翳りが生じた今、ついに「最強企業」の終わりが始まっている。 任天堂の競合は任天堂しかいない  まず、任天堂にとって現状の売り上げ、利益がいかに異常事態にあるか。一月十七日、一四年三月期の売り上げ見通しを九千二百億円から五千九百億円に、営業利益を一・・・