不運の名選手たち 50
鈴木貴人(アイスホッケー選手)氷上で散ったソチへの情熱
中村 計
2014年2月号
氷のような情熱。そんな言葉が似合う男だった。
鈴木貴人。アイスホッケー日本男子の象徴的存在で、「タカヒト」の呼び名で親しまれた。寡黙な男だが、うちに秘めた闘志は誰にも負けていなかった。
乱闘はアイスホッケーの華だ。本場カナダに留学していた頃、身長一七三センチの体ではるかに大きな男に勝負を挑んだこともある。
「グローブを落としたらケンカの合図。殴り合うときは、素手でやり合うというのが暗黙の了解なんです。気持ちが引いちゃうと、プレーも引いてきちゃうことがあるのでやるときはやらないと」
そんな話も、まるで天気の話でもしているかのように、何事もないかのように語る。
反則を犯し退場時間が長いことは、アイスホッケーでは勇敢さの証明でもある。鈴木は常に退場時間の長い選手だった。
そんな鈴木が現役引退を決めたのは二〇一三年春だった。
「自分のメンタル、体、技術で、できることはやったかなというのがあった」
その数カ月前のこと―。
ブザーが鳴・・・
鈴木貴人。アイスホッケー日本男子の象徴的存在で、「タカヒト」の呼び名で親しまれた。寡黙な男だが、うちに秘めた闘志は誰にも負けていなかった。
乱闘はアイスホッケーの華だ。本場カナダに留学していた頃、身長一七三センチの体ではるかに大きな男に勝負を挑んだこともある。
「グローブを落としたらケンカの合図。殴り合うときは、素手でやり合うというのが暗黙の了解なんです。気持ちが引いちゃうと、プレーも引いてきちゃうことがあるのでやるときはやらないと」
そんな話も、まるで天気の話でもしているかのように、何事もないかのように語る。
反則を犯し退場時間が長いことは、アイスホッケーでは勇敢さの証明でもある。鈴木は常に退場時間の長い選手だった。
そんな鈴木が現役引退を決めたのは二〇一三年春だった。
「自分のメンタル、体、技術で、できることはやったかなというのがあった」
その数カ月前のこと―。
ブザーが鳴・・・