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連載

本に遇う 連載 170

品川正治の憲法墨守
河谷 史夫

2014年2月号


アベノミクスなどという怪しげなお囃子に浮かれて踊らされるのは勝手だが、何かゆゆしいことが進行していると見て間違いない。
〈髭のないヒトラー顔に見えてきてわれ等は多分ナチス党員 杉森日出夫〉とか〈例外に例外重ね気がつけば戦争放棄を放棄する朝 水辺あお〉という歌を新聞歌壇に見る。不気味さを感じている人が少なからずいるということだ。

 秘密保護法の強行採決に身構えざるを得ず、集団的自衛権の憲法解釈変更、さらに憲法改定と、アベノポリティクスの向かうところを予知すれば、そうそうぼんやりとしてもいられまい。

 八年前、小泉純一郎の後を襲い五十二歳で宰相の座に就いたときの安倍晋三は、若気の至りか「美しい国」を惹句にはしゃぎ過ぎて転んだが、再登板後は実に慎重で、余計な装いは施さない。陰に軍師でもいるのか、「勇ましい国」を目指して着々と手を打っている。

 六〇年安保を強行採決し、反対運動に対し自衛隊出動を図った岸信介の孫で、その祖父を尊敬してやまない安倍が「平和国家日本」を護持するわけがない。国の形を変え、「戦後日本・・・