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連載

西風 393

日本版NIHは関西を救うか

2014年2月号


 関西の新聞に「iPS」の字が躍らぬ日はない。京都大学の山中伸弥教授が一昨年にノーベル賞を受賞した人工多能性幹細胞に関西中が熱い視線を送っていることの証左だ。実際、iPS細胞を核に産業の活性化に?げられないかという動きが始まっている。関西の官民が現在、揃って期待しているのは安倍晋三首相が掲げる「日本版NIH(国立衛生研究所)」だ。

 昨年末に政府の健康・医療戦略推進本部は、二〇一四年度予算に日本版NIH設立のために総額一千二百十五億円を計上した。担当する文部科学省、厚生労働省、経済産業省の予算を寄せ集めたものではあるが、一月の国会開会直前に菅義偉官房長官が改めてNIH創設に意欲を見せるなど、政府の意気込みは大きい。

 もともと関西は医療、薬品の「土壌」があるといわれる。大阪には江戸時代からの薬種問屋街「道修町」の伝統を引き継ぐ製薬産業が残り、臨床で評価の高い大阪大学医学部も存在する。また、iPS関連の研究機関も「京都大学iPS細胞研究所」を筆頭に、関西地方に多く存在する。

 昨年末、関西経済連合会の森詳介会長・・・