日本美術を「愛でない」日本人
主要コレクターは海外ばかり
2014年2月号
今を遡る事六年前、日本美術史を代表する仏師運慶の手によると思われる「木造大日如来坐像」(現在重文指定)が、クリスティーズ・ニューヨークの日本美術オークションにかけられ、日本古美術品としてはオークション史上最高価格の一千四百三十万ドル(当時約十四億三千万円)で落札された。当初落札者は三越百貨店と発表されたが、後に宗教法人「真如苑」が真のバイヤーと判り、その落札金額と共に話題になった事を覚えている人も多いに違いない。が、この一件で最も世間を騒がせたのは、その高額な落札価格のみならず、これほどまでに重要な日本美術作品が海外のオークションに出る、言い換えれば「海外流出」を文化庁が許可したという事だった。
そして、そのオークションの一カ月前、建国記念日の毎日新聞朝刊一面に掲載された「伝運慶作の仏像、海外流出か?」の記事、またオークション後『芸術新潮』誌に掲載された「運慶オークション顛末記」は、現代日本社会が持つ自国文化・芸術保存に関する偏った考えと、「外国人には日本美術など判らない」といった偏見にみちたものだったのである。
政財界人は興味すら示さない
・・・