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同盟関係とは何か

佐伯 啓思(京都大学大学院 人間・環境学研究科教授)

2014年2月号

 ―同盟関係とは、そもそもどういったものですか。

 佐伯 各国間の勢力を均衡させるために近世ヨーロッパで生まれた考えだ。十七世紀に、欧州で主権国家という考えが生まれて以降、それまでの教皇を中心とした宗教的支配だけでは国家間の利害調整に限界が生じた。十九世紀に入り、勢力を均衡させるために他国と軍事的に手を組み始めたのが同盟の基本。国益を守るために自国の防衛力を補完した。この国益は時間とともに変化するため、当然同盟関係も時代に合わせてある程度柔軟に組み換えが行われた。しかし二十世紀に入り、米国が二度の大戦に参加する際、「自由と民主主義を守る」という大義を同盟関係に持ち込んだ。これによって同盟は単なる利害的?がりとともに、米国の普遍的価値を守るというイデオロギー的?がりの性格も帯びるようになった。


 ―米国が持ち込んだイデオロギーによる同盟は現在も有効ですか。

 佐伯 冷戦構造下で・・・