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連載

皇室の風 65

殯と大嘗祭
岩井 克己

2014年1月号


平成二年十一月二十二日の大嘗祭では、筆者は東御苑に建設された巨大な大嘗宮の前の仮設テント「幄舎」の参列者席最後尾の報道席にいた。空に月は出ていたものの次第に闇は深まり、御苑は皇居外周を走る車の音だけが遠く響く静寂に包まれた。

 そこへ次々にバスが到着。「おう、寒いのう」と遠慮ない声をあげる浜田幸一らを先頭に国会議員団がどやどやと席に着いた。三権の長や中曽根康弘ら歴代総理・閣僚や都道府県知事、財界など各界からの招待客も着席。その数は総計七百人余。何となく空気が生臭くなったように感じた。

 午後五時過ぎから午後九時過ぎまで約四時間にわたって天皇の悠紀殿の儀が行われたが、殿内での天皇の「秘儀」はもちろん、廻廊を歩む姿も諸役の動きも全く見えない。奏されたという神楽歌など楽部の奏楽もほとんど聞こえず、ただひたすらじっと座って寒さを我慢しただけで終わった。

 午後十一時過ぎから翌二十三日午前三時過ぎまで続く主基殿の儀は希望すれば欠席できたので、幄舎内の人数は五百人ほどに激減。元総理も鈴木善幸、竹下登の二人が義理堅く残って・・・