王子製紙が 中国で立ち往生
工場稼働も撤退もできない
2014年1月号
王子製紙が社運を賭けて中国・江蘇省南通市へ進出した、いわゆる「南通プロジェクト」。「環境問題」から暴徒化した地元住民によるあの忌まわしい「一万人デモ」から早一年半が経過しようとしているが、その後プロジェクトは進捗を見せるどころかいまだ工場の一部しか稼働に至らず、いまや存続の危機に立たされているといっても過言ではない状況だ。
問題の工場排水問題では、地元政府の甘言に乗せられては交渉が二転三転。王子側からの度重なる支出が垂れ流されるばかりで、工場の全面稼働のめどさえ立たない。中国が仕掛けた「蟻地獄」から抜け出す糸口さえ見えぬ、完全なる泥沼状態に陥っている。
費用と時間を浪費し続けた十年
この間、王子が南通プロジェクトで浪費した歳月は、実に十年に及ぶ。王子が最初に南通進出を表明したのは二〇〇三年六月。当初の総投資額は二千億円規模で、原料となるパルプ工場を併設した製紙一貫生産工場という触れ込みで、高級印刷用紙の製紙設備一系列、パルプ生産設備一系列、一般紙の製紙設備二系列などが〇六年に完成する計画だった。
ところが、現状は高級紙の第一・・・