《クローズ・アップ》柘植康英(JR東海次期社長)
葛西独裁経営下の「名ばかり社長」
2014年1月号
旧国鉄入社で東海旅客鉄道(JR東海)に移籍してからは、総務部長、人事部長、秘書部長と絵に描いたような本流を歩み、副社長から順当に社長への昇格が決まった。十年前から確定していたような人事で、サプライズはまったくない。むしろ、今回のトップ人事で経済界を驚かせたのは「葛西敬之代表取締役名誉会長」だろう。
世の中に実力会長というのは数知れずおり、「名誉会長」も少なくないが、代表権を持った名誉会長というのは前代未聞に近いだろう。「名誉」がつけば肩書のみで、社業にかかわらないというのが世の中の掟だからだ。「会社にとって自分がまだ必要で、代表権を持っておくべき」と考えれば、会長を続ければいいだけだ。
それができなかったのはJR東海発足以来、二十五年間にわたって経営トップの座に居座り続け、「長期独裁政権」との批判を免れないからだ。葛西氏の政治力は会社にとってはプラス面もあろう。だが、葛西氏の前では社長を含めた役員陣は「小僧っ子」にすぎず、沈黙せざるを得ない。経営の新陳代謝、新しい戦略展開は絶望的だ。鉄道会社だからではないが、柘植次期社長は&・・・