《罪深きはこの官僚》皆川芳嗣(農林水産事務次官)
福島県産米「風評被害」の戦犯
2014年1月号
東京電力福島第一原子力発電所事故による放射性物質で汚染された地域でのコメの収穫を迎えた二〇一三年秋、福島県の農家は「全量全袋検査」を実施してコメの安全性を懸命に訴えた。しかし消費者は「検査」の危うさを見抜いている。人間ドックで病気を発見できても治療できないのと同じだ。問題の存在を前提とする限り、消費者は納得しない。こんな無意味な検査が始まった責任は、農林水産省の無能と隠蔽体質にある。
原発事故から半月ほどたった一一年四月、福島県の稲作地帯では「米の作付けをどうするか」という課題に直面した。農水省は生育中の稲が放射性セシウムを吸い上げて玄米に蓄積される「移行率」を「十分の一」とし、土壌の放射性セシウム濃度が一キログラム当たり五千ベクレル以下なら作付けを認め、検査を徹底して出荷することにした。
しかし一二年に、福島県農業総合センターや独立行政法人・農業環境技術研究所などが実施した調査は驚くべき結果だった。「土壌の放射性セシウム濃度と玄米中の放射性セシウム濃度の間には相関関係は見られない」というのだ。セシウムと構造が類似するカリウ・・・