臨時国会が閉幕した二〇一三年十二月九日の夕方。安倍晋三首相は記者会見し、特定秘密保護法と並んで農地中間管理機構の関連法を成立させ、農政改革に着手したことを成果として強調した。顔を紅潮させ「自民党では絶対にできないと言われてきた減反を、われわれは廃止したのです」と力説したが、すぐにアジ演説ではなく記者会見だということを思い出したのだろう。末尾だけ「廃止することを決めたのです」と言い直した。 　この「微修正」ほど、減反に関する安倍政権のレトリックを象徴するものはない。官邸の「農政転換」は実は掛け声だけで、その正体は「五年後廃止」という「方針」を決めただけの単なる先送りであり、当面の減反は廃止どころか「強化」される。まさしく「偽装廃止」なのだ。 官邸に利用された財界とメディア 　その約二週間前、十一月二十五日の自由民主党本部。農政改革の方針を決める大詰め段階で、秋田県や宮崎県などの農村部から選出された国会議員の怒号が飛ぶ。 「こんなんでは実際にワークしないだろう」 　首をすくめる齋藤健農林部会長。夕方五時に会議は打ち切られて散開。七時に再・・・