「瀬戸際」のサウド王家
米国の「変節」で危機に現実味
2014年1月号
イスラエルのネタニヤフ首相が「歴史的過ち」と呼んだ米国の中東政策の大転換で、アラブの盟主サウジアラビアに大きな危機が待ち受けている。二〇一三年十一月末にジュネーブ合意が成立し、イランが経済的孤立を脱却するかもしれないという展開は、一方で、様々な矛盾を包含しつつもこれまで幸運な繁栄を謳歌できた時代遅れの宗教国家・サウジアラビアの崩壊プロセスの始まりと同義である。
「サウド家のアラビア」はそれまで獲得に向けて努力していた国連安保理非常任理事国への就任を一夜にして拒否したり、ロシアとの接近を図ったりと、あらゆる手段を用いて米国の「心変わり」を引き留めようと腐心したが果たせなかった。このオバマ政権による「八十年目の浮気」の背景には、シェールガス革命とも言うべき、欧米系企業による世界エネルギー地図塗り替えの動きが静かに横たわっている。栓をひねれば湯水のごとく石油の噴き出るサウジアラビアは、立ち位置を間違うと原油価格を暴落させる厄介者になる。
イラン復権で抱え込む「爆弾」
一九三二年の建国以来、サウド家は超大国米国との盟約に守られて世界に石油を安定供給し・・・