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経済

自動車業界脅かすアスベスト問題

三菱自で「労災隠蔽」疑惑が浮上

2013年11月号

 二〇〇〇年に発覚した大規模リコール隠しによる経営危機から、「オール三菱」の支援で再建を進めてきた三菱自動車(以下、三菱自)で、アスベスト労災の「隠蔽疑惑」が浮上している。背景には、補償コストを最小化したいという自動車産業界の思惑が見え隠れするが、一方で大クライアントの意向を忖度したかのようなマスメディアの「及び腰」の報道姿勢が事態を一層不透明なものにしている。

「一切を伏せてほしい」

「何がなんでも抑えたいということでしょう」  こう憤るのは、アスベスト労災被害者の遺族・河西保夫さんだ。河西さんの父・斎さんは一九六一年から三菱自動車水島製作所(岡山県倉敷市)に勤務してきた。金型成型やトラックボディの溶接作業などに従事するなかでアスベストに曝露し、一一年十一月、悪性胸膜中皮腫で死亡した。倉敷労働基準監督署は翌年二月、河西斎さんの死亡を「労働災害」と認定した。  アスベスト(石綿)は、天然鉱物でできた軽くて綿状の繊維の集まりだが、熱や火に強く、腐らず加工しやすいなどの利点から、建築資材、工業製品など多くの分野で使われてきたのは周知のとお・・・