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社会・文化

見直される日本酒の魅力

秋の夜長を彩る奥深い味覚の世界

2013年11月号

 秋の深まりとともに、冷やでも燗でも楽しめる日本酒(清酒)のベストシーズンが到来した。特にこの数年は、質の良い地酒が増え、ネット通販の充実で入手も比較的容易になった。ただし、消費者の日本酒離れには歯止めが掛からず、日本酒業界にとっては課題も多い。  清酒の国内消費量は、二〇一〇年で約五十九万キロリットル。四十年前の約百七十万キロリットルからほぼ一貫して減り続け、三分の一近い水準にまで落ち込んでいる。蔵元(製造免許場)数も、戦後ピーク(一九五五年)の約四千場から約一千七百場にまで減少した。  背景には、食生活が洋風化してワインなどと競合したことや、娯楽の多様化によってアルコールそのものの消費が減ったことが挙げられている。しかし、酒が庫出税(蔵出し課税)であることも、清酒離れの一因だ。  庫出税は、出荷時にまとめて業者から徴税するため脱税しにくく、業者数が少ないほど徴税コストが低い。明治政府は庫出税を導入し、ドブロクの密造を徹底的に摘発するとともに増税を繰り返した。こうした経緯が、清酒をもっぱら税の対象として位置付け、産業としての振興をおろそかにする体質につながってきた。・・・