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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》公安警察

この国の「諜報世界」を歪める者

2013年11月号

「日本という国を運営するうえで必要な各国の情報をとる『長い耳』が必要だと思う。ただこれはうっかりすると両刃の剣になる」

 カミソリと称された後藤田正晴元官房長官は亡くなる約一年前、二〇〇四年九月に朝日新聞のインタビューにこう答えた。かねて日本に独自の情報機関が必要だということを持論としていた後藤田氏は、ウサギの最強の武器である耳に例えて、インテリジェンスの重要性と危険性について語った。

 現在、政府は米国の国家安全保障会議(NSC)を模した日本版NSC創設に向けて動いている。しかし、外務省と警察庁、防衛省を巻き込んだ醜い主導権争いに終始し、器だけ取り繕って魂の入らぬ組織になろうとしている。

「日本のインテリジェンスが後進国並みなのは、情報機関の機能を警察に依存し続けてきたからだ。公安警察を真っ先に解体しなくてはならない」

 防衛省のキャリア官僚の一人はこう語る。警察の一部門に過ぎない公安が、この国の情報を歪めてきたのだという。公安は現在、その存在意義すら明確にならないなかで警察組織の中での権力・・・