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社会・文化

「成長戦略」医療は高転びする

司令塔は「札つき」医師ばかり

2013年10月号

 安倍政権は、再生医療や医薬品開発を成長戦略の中核に据えているが、その雲行きが極めて怪しい。医学研究の司令塔として米国の国立衛生研究所(NIH)を模して「日本版NIH」を創設する方針だが、これに関する人事がデタラメなのだ。組織の方向性を決める「専門調査会」の委員として、永井良三・自治医科大学学長や平野俊夫・大阪大学総長をはじめ十人の名前が挙がっている。いずれも、「我が国の医学研究を停滞させた戦犯」(都内の医学部教授)であり、「民主党政権で冷や飯を食った連中が、一気に息を吹き返した」(医療ジャーナリスト)感がある。  特にひどいのが垣添忠生・日本対がん協会会長だ。垣添は一九六七年東大医学部を卒業した泌尿器科医。七五年から国立がんセンター(現国立がん研究センター)に勤務し、二〇〇二~〇七年まで総長を務めた。「ミスター国立がんセンター」とも言われる存在だ。  この人物の評判が悪い。「手術の腕は二流で、研究業績もたいしたことはない」(元国立がん研究センター職員)のに、やたらと権力欲だけは強い。一部の医系技官とつるんで、あまたの審議会の委員に名を連ねてきた。多くの研究費を分担する・・・