岐路に立つ「展覧会ビジネス」
「主催大メディア」が美術を歪めている
2013年10月号
海外から著名な美術作品を借用して展示する展覧会が、今日も日本のどこかの都市で開催されている。日本では、こうした大型展が、まず例外なく、国公立の美術館・博物館(以下、総称して美術館という)と、新聞社や放送局といったメディアによる共同主催の体制で行われる。もちろんこの体制が健全に機能していればよい。
しかし、独立行政法人である国立美術館に対する国の認識不足、近年のメディア企業の経営悪化、さらに美術館の弱体化やそこに働く者の意識の低下というさまざまな要因により、近年の展覧会は、主催の体制や運営において深刻な問題を露呈している。展覧会ビジネスは、いわば八方ふさがりの状態なのである。
問題なのは、大規模な費用をかけて開催される海外美術展だ。展覧会の広告は、新聞、テレビ、駅貼りポスター、インターネットに至るまでくまなく展開され、いや応なしに人々の耳目に届く。それで大衆は、ツタンカーメンと聞けば、酷暑の中、長蛇の列に並び、また世界で一番有名な少女(フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」)の来日と言われれば、人だかりの後ろから小さな絵を覗きに行く。この有名なフェルメールの絵画を展示・・・