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連載

不運の名選手たち45

参河紀久子(バスケットボール選手) 「宿敵」に負け続けた名シューター
中村計

2013年9月号

 七年間、負け続けた。

「嫌ですね、嫌。あの悔しさというか、やられたという感じは一生忘れられないでしょうね」

 元全日本チームの名シューター、参河紀久子はそう言って口をキュッと結んだ。

 社会人の女子バスケットボールリーグは、一九八〇年代から今日までほぼ「二強」の時代が続いている。旧・共同石油(現・JX-ENEOSサンフラワーズ)とシャンソン化粧品である。

 参河が高校卒業後、一九八七年に共同石油に入社した頃はシャンソンが優勢だった。だが共同石油は同年、強力な外国人選手を獲得。戦力がアップし、入社一年目と三年目は美酒を味わった。

 シャンソンの黄金時代が始まったのは参河の入社四年目、九〇年だった。根拠は、はっきりしていた。身長一八〇センチの加藤貴子が入団したのだ。加藤は神奈川県立富岡高校(現・金沢総合高校)在学中に全国制覇を果たし、史上初めて高校生として全日本入りしたスター選手だった。シャンソンはそこから加藤が退団するまで勝ち続け、十連覇を積み上げた。

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