インド「ルピー防衛」に打つ手なし
「破綻寸前」に現実味
2013年9月号
「一喜一憂する必要はない。これまで財務省は経常赤字削減を訴え、輸出や対内直接投資を増やすために具体策を講じてきた。規制緩和と金融や税制優遇策等の効果が表面化する次の四半期には、改善するだろう」。インド財務省首席経済顧問のラグラム・ラジャン氏は三月、「二〇一二年四~十二月の経常赤字が過去最悪のGDP比六・七%」という発表を受けても、記者団の前でこう楽観的見通しを語っていた。
インドの通貨ルピーは過去十年の間、一ドル=四十ルピー台で安定してきた。だが、今年五月に下落が始まると六月に史上最安値を突破、下落が止まるどころか加速している。すでにリーマンショック時を超える下落となっている通貨ルピーは、経済開放後「最大の危機」に直面しており、デフォルト寸前に追い込まれた一九九一年の「インド外貨危機」の再来が今や現実味を帯びてきている。
誰もルピーを欲しがらない
さて、冒頭のラジャン氏とはいかなる人物か。聞き覚えがある読者もいるだろう。同氏は六三年にインドで生まれ、米マサチューセッツ工科大学で博士号を取得し、〇三年に最年少で国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミスト・・・